友人に「村井理子」さんという著者を教えてもらいました。
まず読んだのが『兄の終い』、つぎに料理本の『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』。そして、この『全員悪人』。
まずは『全員悪人』について。
読んだ友人たちに聞いてみると、ほとんどの人が『私もそうなりそう!』とのことでした(笑)
本の内容は、義母が認知症なんだけど、認知症の本人にしてみれば自分だけマトモで、自分以外の他者は何かを企んでいる悪者ばかり、と感じている話だ。
認知症で料理など家事ができなくなっている、でも、本人にはそれが理解できず、知らない女の人(実はヘルパーさん)が自分の大事な台所で料理をしていると思う。
大事な夫が脳梗塞で入院してしまい、いま自宅にいるのは夫にそっくりなパパゴンというロボットだと思う。
そして、ロボットのパパゴンを懲らしめるため、寝ているパパゴンにTVのリモコンで額を叩いた・・・。
その瞬間、パパゴンが本物の夫に変わっていた。
そうかと思うと、愛する夫が、自分に黙って愛人を隠していると思い込み、夜中に夫の布団をめくりあげる。
うーん、読んでいて辛かったです。
確かに、認知症の人にとって、世の中の見え方が変わってくると聞いたことがあります。幻覚や幻聴が出ることも。そして、それらのせいで、内申は自分に対しても、自分以外の世界に対しても、とても不安な気持ちになっていることも。
とはいえ、介護する立場の家族にとっては苦しいことだらけ。
この本の中では、自分より認知症が進んでしまった妻の変わり様に困惑する夫が一番辛そうだ。
そら、そうでしょう。
寝てるとTVのリモコンで叩かれるわ、浮気を疑われて夜中に急に布団を剥がされるわ、面倒を見てくれている嫁の事を「お金がなくなっているのは、彼女が私の財布からお金を盗ったのではないか?」と言い出すわ・・・。
高齢者が抱く、変化への恐れや苦しみ、孤立、それに伴う焦燥感・・・(中略)・・・普通に出来ていたことが、出来なくなってしまう悲しさ。プライドを踏みにじられたと思い、募る他者への怒り。
『全員悪人』あとがき より
とはいえ、やはり私はまだ介護する側なので、高齢者の家族がこうなってしまったら本当に困ります。
本人がいくら言っても、私なら、本人の意向を一番にするのではなく、私が一番楽になる方法をとるでしょう。
なぜなら、家族だからこそ、こんな状態になった家族をずっと見張って、一緒に暮らしていくことはできない。色んな事が出来なくなってしまった家族を見るのが辛くなり、余計に腹が立ってしまう。そんな状態が続くと、虐待しかねないと思う。
そうならないためにも、介護のプロに、間に入ってほしい。
『認知症はね、大好きな人を攻撃してしまう病なんですよ。すべて病がさせることなんです』と、地域包括支援センターの人が著者に言ったそうだ。
そして家族の側からも、本人を大事に思うからこそ、認知症の家族を攻撃したくない、と思います。